ノンシリコンシャンプーが流行したとき、界面活性剤を使用した従来のシャンプーは、実は髪の毛に悪い、などとして倦厭されました。
それは、従来の界面活性剤入りシャンプーは強い洗浄力を持っているため、体質や髪質によっては洗いすぎてダメージになってしまうなどの理由がありました
しばらく経つと、ノンシリコンシャンプーの使用感が髪が軋む、泡立ちが悪い、などの理由により流行は収束していきました。
このノンシリコンシャンプーの流行により、理由はよくわからないが、界面活性剤は悪いものだ。と思っている方が多いのではないでしょうか?
今回はシャンプー、洗剤や食べ物、化粧品など身近なものに広く使用されている界面活性剤について基礎的なことを記載していきます
界面活性剤とは
まず「界面」とは、物体の境目のことです。
水と油のように、本来であれば性質が異なり混ざり合うことができない成分を界面活性剤は混ぜること可能します。
ではなぜ、界面活性剤は水と油を混ぜることができるのでしょうか?
界面活性剤は水と馴染みやすい「親水基」と油と馴染みやすい「親油基(疎水基)」を合わせ持っていきます。水と油両方になじみやすい界面活性剤が間に入ることにより、両者の混ざった状態を維持することが可能になるのです。
界面活性剤の作用とは
・浸透作用
・乳化作用
・分散作用
という3つの作用があります。
上記3つが総合的に働いて、衣類や食器などの汚れを落とします。
【浸透作用】
ウールなどの繊維を水に浸しても、繊維の中に水はなかなか入っていかず、なじみません。新品のタオルなども水に浸しても給水しませんよね?
これと同様の作用です。これは、界面張力(水の分子同士が引き合う力)が強く働いているためです。
水に界面活性剤を入れると界面張力が下がり、繊維の表面と水がなじみやすくなるため、繊維の中に水が簡単に入っていきます。これを浸透作用といいます。
【乳化作用】
水に油を混ぜようとしても、分離してしまいます。水と油ということわざがありますが、「互いに気が合わず反発しあって仲が悪いこと」ということから発生しました。
異質で溶けあわないものの例えです。
ことわざになるくらい、水と油を混ぜ合わせることは困難なのです。
しかし
ここに界面活性剤を加えると、界面活性剤の親油基が油の粒子を取り囲み、親水基が外側に並ぶため、水と油が均一に混ざり合うことができます✨
これを乳化作用といいます。天然の乳化物の代表が牛乳です。
牛乳は、含まれるたんぱく質が界面活性剤の働きをして、水と脂肪が混ざり合った状態を保っています
【分散作用】
ススのような粉体を水にいれても、混ざり合わずに表面に浮かんでしまいます。
ここに界面活性剤を入れると、ススの粒子は界面活性剤の分子に取り囲まれて、水中に分散します。
このように粉末を水に散らばらす作用を分散作用といいます。
ココアなどの粉末を溶かして飲み物を作ることが可能なのも、分散作用の一つです。
界面活性剤の種類とは
界面活性剤には大きく分けて2つの種類があります。
・天然界面活性剤
・合成界面活性剤
【天然界面活性剤】
自然界に存在する成分(石けん系・アミノ酸系・ベタイン系)
・大豆や黄卵に含まれるレシチン
・牛乳や乳製品に含まれるガゼイン
も天然界面活性剤に当てはまります
【合成界面活性剤】
石油などの原料で人工的に作られた成分(高級アルコール系)
有名な成分だとラウリン酸Na(ココナッツオイルやヤシ油に主に含まれるもの)など多くの種類があります。
洗浄作用もあるため、化粧品や洗剤にも界面活性剤は使用されていますが、この使用されている界面活性剤が天然か合成なのかによって、性質は異なってきます。
界面活性剤のタイプ
界面活性剤は数多くの機能を発揮する(活性を持つ)ために分子設計され、大きく分けて4つのタイプが存在します。
それぞれ水に溶けた時に、電離してイオン(電荷をもつ原子または原子団)となるイオン性界面活性剤
・アニオン界面活性剤(または陰イオン)
・カチオン界面活性剤(または陽イオン)
・両性界面活性剤(陰イオンと陽イオンの両方を併せ持つ)
の3タイプがあります。
さらに、イオンにならない
・ノニオン界面活性剤(非イオン)
の1つとで合計4つのタイプがあります。
イオンについて詳しく説明すると長くなってしまうため、ここでは割愛させていただきます。
一言で説明すると、イオンとは、原子が電子を得たり、失ったりして電気を帯びたものです。
・・・難しいですね。
アニオン界面活性剤
水に溶けたときに、疎水基のついている部分がマイナス(負)イオンに電離する界面活性剤のことです。
石けんをはじめ古くから多くの種類が開発されてきており、現在でも合成洗剤やシャンプーなど、その使用量は全界面活性剤の約1/3を占めています
カチオン界面活性剤
水に溶けたとき、疎水基のついている部分がプラス(正)イオンに電離する界面活性剤で石けんとイオン的に逆の構造をもっているため「逆性石けん」と呼ばれることもあります。
繊維や毛髪などのマイナス(負)に帯電している固体表面に強く吸着し、柔軟性、帯電防止性、殺菌性などを付与することができます🤗
構造的にはアミン塩型と第4級アンモニウム塩型に分類され、
繊維の柔軟剤、へアリンス基剤や殺菌剤として第4級アンモニウム塩型が広く使用されています。
両性界面活性剤
水に溶けたとき、アルカリ性領域ではアニオン界面活性剤の性質を、酸性領域ではカチオン界面活性剤の性質を示す界面活性剤です。両方の性質を併せ持っているので両性とつくのです!
一般に使用されているのはほとんどがカルボン酸塩型で、さらにアミノ酸型とベタイン型に分類されますが、ベタイン型は皮膚や眼に対する刺激性が弱く、他の活性剤と組み合わせて洗浄性や起泡性を向上させる補助剤として広く使用されています。
非イオン(ノニオン)界面活性剤
水に溶けたとき、イオン化しない親水基をもっている界面活性剤で、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、
他の全ての界面活性剤と併用できます。
この使いやすさと浸透性、乳化・分散性、洗浄性などの性能面での特徴が認められ、近年、非イオン界面活性剤の使用量の伸びは大きく、アニオン界面活性剤とならぶ主力界面活性剤になっています。
非イオン界面活性剤は分子内の主要な結合の仕方により
・エステル型
・エーテル型
・エステル・エーテル型
・その他
に分類されます。
💎この分類についても詳しく記載するとながくなってしまうため、割愛させていただきます
【おまけ】
その他の界面活性剤
その他、最近では分子量が大きい高分子界面活性剤や他の物質と反応することのできる反応性界面活性剤などが開発されてきています。
また、もともと生体内に存在し細胞膜などを構成しているレシチンや、植物界に広く分布するサポニンなども界面活性剤の仲間です。
【まとめ】
界面活性剤は、大きく分けて、天然界面活性剤、合成界面活性剤の2つに分けられます👌
作用としては、浸透作用、乳化作用、分散作用の3つに分けられ、幅広く使用されています。
さらに界面活性剤のタイプも多数あり、その性質によって洗浄力や乳化作用なども異なってきます。効果の強い界面活性剤もあれば、反面効果の弱い界面活性剤もあります。
体質や皮膚の状態、使用する用途によって使い分けることにより、界面活性剤は私たちの生活に役立つとても便利なものです。
次回は、この界面活性剤を用いたシャンプーについて詳しく記載していきます。
サフォクリニック副院長/美容外科美容皮膚科医
白壁 聖亜
当クリニックの診療は自由診療(保険適応外)となります。