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ゲルニカと美容外科

暗幕のゲルニカ

5月21日から8日間北スペイン、バスク地方のサンセバスチャン、ビルバオ、オビエド、レオン、サンティアゴ・デ・コンポステーラのスペイン北部を横断する巡礼コースの旅をしてきました。

今までスペインは首都のマドリッド、バルセロナには学会で何度も訪問したのですが、ほとんどが飛行場と学会会場、マドリッドやバルセロナの先生のクリニック、ご自宅に行くだけで観光らしきものは殆どしたことがありませんでした。

今回は観光が主体でしたのでとても楽しい旅行でした。

この旅行の出発前日に娘が,バスク地方に行くならぜひこの本を読むようにと勧められたのが原田マハ著「暗幕のゲルニカ」でした。ピカソの代表作「ゲルニカ」にまつわるお話ですが。羽田からサンセバスチャンに到着するまでに一睡もせず読んでしまいました。

実は1990年初めてマドリッドに行った際、この「ゲルニカ」をマドリッド美術館で見ることが出来、その迫力に呆然として立ちすくんだことを覚えています。

何がと言われても、なんとも表現が出来ない絵画でした。

ゲルニカの町をヒットラーが率いるドイツ軍が無差別空爆した、悲惨な状況をピカソがパリ万博のスペイン館正面に張り出すために描いた力作でした。この本をよむことにより大変身近に「ゲルニカ」を感じました。市民や動物が叫び狂う状態をデフォルメした有名な絵です。

私は2年後、1992年ハワイで行われた第21回環太平洋形成外科学会で発表した演題「Deformation its application to cosmetic facial surgery」でまず最初にDeformationの説明にこの「ゲルニカ」の絵を用いました、同時に写楽の浮世絵と仏像を用いました。

写楽、仏像共に顔は大きいが手や胴体がより小さくなっているが顔が強調されバランスはとれている

芸術上のデフォルマシオンの翻訳は「わざと変形して表現し特殊な効果を出すこと」と訳されているが。悪い方に変形、誇張するのではなく良い方にも誇張します。いわゆるバランスの取れた変形と言えます。

この原理を利用して美容外科に用いたのがハワイでの発表の内容でした。

形成外科医、美容外科医が出来る、このDeformationを応用した当時の発表の中の1症例をお見せします。

助手席にて交通事故で顔面外傷を受けた女性です。
フロントガラスで出来た顔面広範囲な傷を形成的にて治療

我々も手品師ではありませんので傷が消えてなくなることはありません。

まず形成外科的な手技を用いて傷をきれいにしていきます1年後にさらに残っている傷を治します 鼻根部の傷

そして残った傷よりもっときれいな何かを顔の中に挿入することで目線をそこに集中させることです。いわゆる視線移動をさせることでほかの傷をぼかします。僅かに鼻筋を通すための隆鼻術を行います上瞼の傷を隠すために奥二重の手術をおこなうことで目が大きくなります

      他人の目線を出来る限り最もよく動く目と鼻筋に集中させます

今回の旅行でゲルニカの町を訪問することは出来ませんでしたが、27年ぶりにピカソの「ゲルニカ」を思い出しました。

記事監修医師プロフィール

サフォクリニック副院長/美容外科美容皮膚科医

白壁 聖亜

経歴

  • 2007帝京大学医学部 卒業
  • 2010湘南鎌倉総合病院形成美容外科勤務
  • 2019シロノクリニック非常勤勤務
  • 2020サフォクリニック理事就任
  • 2022サフォクリニック副院長就任

所属学会・資格

  • 日本形成外科学会専門医
  • 日本形成外科学会会員
  • 日本美容外科学会(JSAPS)会員
  • 国際美容外科学会(ISAPS)会員
  • 日本レーザー医学会会員

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