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二重手術の起源は米国シカゴにあった 第3部

河本先生からHotz先生へ

前回は美甘先生が河本先生の「さかまつげ」の手術がヒントで美容目的の二重の手術を考案したお話でした。

さて次は年代ももっと古くなり、インターナショナルな話になってきます。

医者が医学論文を書くとき、必ずその文献を作るために参考とした文献を論文の最後に書き加えます。それが何年に出たか、タイトルは、出した医師の名前、雑誌名 雑誌社の名前、その文献の何ページに出ているかを書き加えます。この参考文献を見ると、以前に同じような考えで文献を書いた人がいることを確認し、自分の書いていることが間違ってないか、また誰かのコピーの様ではあたらしい文献としての価値がありませんので却下されることがあります。

必ずオリジナルであることを確認します。そのためにも参考文献を本当に読んだ事を認めるためにページを記載します。

しかしこの参考文献をチェックすることで、さらに古い文献を見つけ出すことも出来ます。

今回の美甘先生の二重の手術を調べていくうちに、河本先生の「さかさまつげ」の手術法をみつけ出しました。

このように次から次と古い参考になる文献を見つけ出すのを、れわれは「マゴ(孫)引き」といって、ずんずん古い時代の文献まで追求していきます。

美甘先生の論文は、私が1980年に岡山大学で学位論文の実験をしている間に時間があいてたので図書館に行って、「二重の手術」で孫引きして見つけ出しました。丁度骨董屋さんで掘り出し物を見つけ出したように興奮しました。

実は、それまでは前回述べた30年後の内田孝蔵先生の重瞼術が世界で最初と言われてましたが、1980年に岡山大学で美甘先生の論文を見つけ、さらに1983年の米国美容外科学会で発表、

1982 米国美容外科学会にて日本における二重術の歴史を話す

Annals of Plastic Surgeryで1985年に論文として報告しました。
1985 Annals of Plastic Surgery

遂に 5年目にして「世界で最初の二重手術法は美甘法」と認められました。

あの味が忘れられず、今でも時間があると国立国会図書館に通い、掘り出しものを探すのが趣味になりました。

私の岡山大学から頂いた医学博士の称号は未だに何の役にも立っていませんが、この論文を見つけたことは世界の美容外科の中で大きな功績をあげたと自負しております。 

今回河本先生の文献は、美甘先生の文献の中にあった言葉「河本式内反症手術がヒントになりました」と言う文書からの「孫引き」でしたが、実は河本先生の文献からも一文見つけ出しました。

これこそタイトルの「二重手術の起源は米国シカゴにあった」に到達しました。

1882 年にアメリカの眼科専門雑誌に出ているシカゴ在住のDr.F.C.Hotz(ホッツ)の「上眼瞼内反症手術」を参考に河本式手術法を考案したとの文書でした。

早速「孫引き」をと行きたいところですが、1800年代の米国医学文献を日本の図書館で見つけることは難しく、そこでベテランの日本の眼科の先生にお願いして文献を取り寄せてもらいたく、東京水車橋眼科クリニックの矢部比呂夫 先生にお願いし、苦労して1か月後に送っていただきました。
Hotzの「さかさまつげ」の文献

これでページも文献に挿入することができます。ところがこの論文には彼の顔写真も術式説明イラストもありませんでした。

そこで昨年10月丁度米国マイアミで国際美容外科学会があったので、途中ラレイにあるデューク大学の病院に行ったついでに、図書館で彼の写真を見つけました。
Dr.F.C.Hotz

イラストに関しては日本で「孫引き」を行い1905年(明治37年)小川剣太郎先生の眼科手術書から「ホッツ式眼瞼内反症手術」を見つけ出しました。
1905年小川眼瞼手術書
小川剣太郎教授

又1938年林 熊男先生が眼科臨床医報という雑誌に「ホッツ式重瞼術」という文献も同時に見つけました。彼は美甘法をベースにホッツの原理を応用して美容目的の二重手術を論じています。

実際 西洋人に二重手術は必要ありませんが「さかさまつげ」はありますので眼科医であるシカゴのHotz先生が、世界で最初にこの「逆さ睫毛改善目的で考案した手術」を報告し、これを参考に河本先生はモディファイして日本人に応用したわけです。

さらにこれを美容の目的として美甘先生が美甘式重瞼術として世界で最初に報告したわけですが、原理として二重の手術の起源は

米国シカゴにありました。

いかがでしたか今から137年前の二重手術のお話でした。

アジアではダントツに古い歴史を持っている日本の美容外科の一端をお話いたしました

この話は昨年10月 東京で行われた日本眼科疾患シンポジュームで報告しました

記事監修医師プロフィール

サフォクリニック副院長/美容外科美容皮膚科医

白壁 聖亜

経歴

  • 2007帝京大学医学部 卒業
  • 2010湘南鎌倉総合病院形成美容外科勤務
  • 2019シロノクリニック非常勤勤務
  • 2020サフォクリニック理事就任
  • 2022サフォクリニック副院長就任

所属学会・資格

  • 日本形成外科学会専門医
  • 日本形成外科学会会員
  • 日本美容外科学会(JSAPS)会員
  • 国際美容外科学会(ISAPS)会員
  • 日本レーザー医学会会員

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