昔からスワンネックと言って西洋人は首の前の長さ美しさを美としていましたが着物文化の日本では前は隠し後ろの襟足を首の美と意識していました。
しかし洋服を着て首を出すようになり首の前面を気になり出したのはごく最近です。
さて私が創案したSMAS三角弁法の話に戻しますが実はこの方法はSMAS(表在性筋膜)が側頭筋から広頚筋まで1枚の筋膜で覆われている点を利用しました。
今までの皮膚で引き上げるだけではなくSMAS(表在性筋膜)を先に引き上げる事で、西洋人よりも厚く 重い皮膚、皮下脂肪の多い皮下組織を脂肪吸引でそぎ落とします。
軽く、細くする目的で日本人の顔に合わせて考案したものです。
SMASを先に引き上げた上で、皮膚の余剰を切除すると縫った創部に負担もかからず、きれいで、顔もしっかり上がり、効果が長持ちすることを狙った手術法です(当時は「白壁式ダブルリフト」と呼んでました)
下のイラストで説明すると
黄色い部分は顔面、頸部に蓄積した脂肪を吸引し顔を細く軽くすること、そしてFetheringの部分は脂肪吸引もするが、剥がした境界部に段差が出来ないよう飛行機の翼の様に滑らかなカーブをかけました。(下のイラストの左上の図)
と同時に皮下脂肪にハチの巣の様に沢山穴をあけることでメッシュ効果で皮膚を伸びやすくする効果(Honnecomb Condition )を作りました
又下顎、首、頬にある脂肪は吸引により削ぎ落とし下顎骨(右下のイラストの白い丸部分)の輪郭がはっきり出ることで顔と首との境界を鮮明にし下のイラストの如く耳下のSMASを三角へとして耳の後方に引き上げました。(右下のイラスト)
緑がSMAS切除部位で耳前のSMASを筋膜弁として耳後方に引き上げることで広頚筋も上がり、同時に頬の下垂した脂肪も挙上し、法令線が浅くなり、首がすっきりする方法を用いました。
1頭側方向
2耳前方向
3耳前のSMSを耳介後方へ
(これにより首の短い日本人の広頚筋をSMASと共に耳介後方に確実に引き上げました。
これ以外にもいろいろなSMASを利用した方法を考案し報告した。
1988年に米国美容外科誌に報告したSMASの応用
1)通常にSMASを引き上げる方法
2)頬骨の下で折り曲げて有茎移植(血管をつないだまま)として頬の下の陥凹を治す
3)切り取ったSMASを遊離移植(切り離した塊)として陥凹部に直接移植する
4)切り取ったSMASを法令線、口唇部に移植する
等である
この結果からのSMAS三角弁法での術後経過
効果は抜群ですがダウンタイムは残ってます。
1986年米国美容外科で受賞報告した症例
SALはSuction Assisted Lipectomy(脂肪吸引)の略語
頸部の脂肪吸引とSMAS三角弁法を用いた
この術式によるフェイスネックリフトで頸部の脂肪吸引と広頚筋を含めたSMAS三角弁法により首が細くなり長く見えるので顔が小さくなっている。この手術の最大の利点である
上の症例は首の筋肉を顎(頤)の下で切開して直接引き締め、外側にも引き上げ、ちょうどアコーデオンを開いた状態にして広頚筋の前を引き締めました。
しかしまだ当時は術直後の腫れや内出血も残り、この写真も術後3か月目の写真です。
ただ、後で審査委員長の先生に「何故私の様な開業医がえらばれたのか?」を尋ねました。
この賞は私が受賞するまで受賞医はいずれも大学か施設の形成外科の教授や部長だけでしたので、実は今回最後まで残ったのが、、私とカナダのモントリオール大学の形成外科教授で彼もフェイスリフト手術で候補に残っていました、さらに彼は次期米国美容外科学会の会長予定者でしたので、間違いなく彼が受賞すると諦めていました。
受賞した時はビックリした次第です。そこで後で審査委員長に質問したわけです。彼が言うには「私の手術法は明日から誰でも出来る方法だが、教授の術式はSMASの深い層に剥離を行い、とても効果的であるが、だれもが出来るような方法ではなく非常に難しい方法であった」との答えでした。
間違いなく日本であれば教授が受賞したと思われるアメリカの学会の度量の広さを見た思いでした。
賞金として1000ドルいただきましたが、小切手をロスの日本人老人ホームを訪れ寄付いたしました。
右の背の高いのが私の兄白壁武博です(当時大阪白壁美容外科の理事長)
中央の方がロス日本人老人ホームの理事長です
サフォクリニック副院長/美容外科美容皮膚科医
白壁 聖亜
当クリニックの診療は自由診療(保険適応外)となります。